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情けは人のためならず

 

 

仏教をやさしい言葉で説いた宗教評論家の ひろさちやさんが4月7日に85歳で死去されました。

 

1.経営には宗教的哲学が必要

パナソニック創業者の松下幸之助氏や京セラ、KDDI創業者の稲盛和夫氏、TKC全国会創業者の飯塚毅氏など表現は異なりますが、「経営には宗教的哲学が必要だ」と訴えています。宗教と経営を結びつけるのは危険でもありますが、経営判断の際には、自分の判断を客観的に照らし合わせるための基準として普遍的な宗教的哲学が必要となります。会社経営は、社長と社員が同じ方向に進んでいかなければ、社内が混乱します。そこで会社全体の価値観を共有するために社長の経営哲学を文書化したのが「経営理念」です。私が悩んでいた時に、出会ったのが、ひろさちやさんの本です。

 

2.「情けは人のためならず」の解釈 

 皆さんは、このことわざをどう解釈されるのでしょうか?

他人に情けをかけると甘やかすことになるから、情けをかけるのはその人のためにはならないのだ。

他人に情けをかけておけば、それが巡りめぐっていずれは自分のところに返ってくるのだ。

ひろさちやさんが、ある学校の試験問題として、このことわざの解釈を二者択一で出したところ、300名中90%が①に〇をしたそうです。しかし、本当の意味は②になります。ひろさちやさんが本で警告したにもかかわらず、その後も①と誤った解釈する人が多く主流になりつつあります。

 

3.誤った解釈が浸透

平成22年度の「国語に関する世論調査」での調査結果によると、全体では、本来の意味である②と、本来の意味ではない①を選択した人の割合とが、ともに46%弱となっています。しかし、年代別のグラフを見ると、60歳以上を除く全ての年代で、本来の意味ではない①「人に情けを掛けて助けてやることは、結局はその人のためにならない」を選んだ人の割合の方が多いことがわかります。(文化庁月報 平成24年3月号(No.522)) 

4. KURAMAE`S EYE

この「情けは人のためならず」は新渡戸稲造が作った詩だそうです。その全文は、「施せし情は人の為ならず おのがこゝろの慰めと知れ 

我れ人にかけし恵は忘れても ひとの恩をば長く忘るな

出典:『[新訳]一日一言:「武士道」を貫いて生きるための366の格言集」 新渡戸稲造著』

つまり、

「情けは他人のためではなく自分自身のためにかけるものだ。

だから自分が他人にした良いことは忘れてもいい。

でも、人から良くしてもらったことは絶対に忘れてはいけない」

 

最後まで、全文を読むと誤解を生まなかったのですが・・・